インボイス制度「経過措置」総まとめ ― 8割・7割・5割・3割の仕入税額控除と、2割・3割特例のマイルストーン
インボイス制度には、負担を段階的に軽くするための「経過措置・特例」がいくつも用意されています。しかも令和8年度税制改正で内容が見直され、「7割・5割・3割」「3割特例」といった新しい数字が登場したため、混乱している方も多いのではないでしょうか。
今回は、混同されやすい2つの経過措置を整理し、マイルストーン表でスケジュールを見える化します。
まず整理:2つの経過措置は「買い手向け」と「売り手向け」
| 経過措置① 仕入税額控除の経過措置(8→7→5→3割) | 経過措置② 小規模事業者向け特例(2割特例→3割特例) | |
|---|---|---|
| 誰のための措置か | 買い手(課税仕入れを行う事業者) | 売り手(インボイス登録した小規模事業者) |
| 何が起きるか | 免税事業者など、インボイスを発行できない相手からの仕入れでも、一定割合は仕入税額控除できる | 売上に係る消費税額の一定割合を納めればよい、という簡便な納税額計算ができる |
| 対象者 | 課税事業者全般 | 個人事業者・法人(2割特例)/個人事業者のみ(3割特例) |
この2つは目的も対象者も違うので、まずは「自分がどちら側の話をしているのか」を意識するのがポイントです。
経過措置①:仕入税額控除「8割→7割→5割→3割」のマイルストーン
免税事業者など、インボイスを発行できない相手からの課税仕入れであっても、当面の間は一定割合を仕入税額控除できる、という経過措置です。当初は「80%→50%→控除なし」の3段階で終了する予定でしたが、令和8年度税制改正で適用期限が2年延長され、間に70%・30%の段階が追加されました。
| 期間 | 仕入税額控除できる割合 |
|---|---|
| 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間 | 80% |
| 令和8年10月1日から令和10年9月30日までの日の属する課税期間 | 70%(新設) |
| 令和10年10月1日から令和12年9月30日までの日の属する課税期間 | 50% |
| 令和12年10月1日から令和13年9月30日までの日の属する課税期間 | 30%(新設) |
| 令和13年10月1日以後の日の属する課税期間 | 控除なし(適格請求書の保存が必須に) |
ポイント
- 「8割控除」「5割控除」と呼ばれてきたものが、間に70%・30%を挟んでなだらかに縮小する形に変更されました。
- 控除割合が変わるタイミングでは、会計ソフトの税区分設定(例:「70%控除税区分」など)の更新が必要になるため、決算・経理担当者は早めの確認をおすすめします。
- 最終的に令和13年10月1日以後は、適格請求書(インボイス)の保存がなければ仕入税額控除ができなくなります。
経過措置②:「2割特例」から「3割特例」への切り替え
免税事業者からインボイス発行事業者に登録した小規模事業者向けに、納税額を売上税額の一定割合にできる特例です。こちらも令和8年度改正で内容が変わりました。
| 期間・対象年分 | 特例名 | 納税額の計算 | 対象者 |
|---|---|---|---|
| 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間 | 2割特例 | 売上税額の2割 | 個人事業者・法人 |
| 令和9年分及び令和10年分の消費税申告に係る課税期間 | 3割特例(新設) | 売上税額の3割 | 個人事業者のみ(法人は対象外) |
| 令和11年分以後の課税期間 | 特例終了 | 本則課税 または 簡易課税 | ― |
ポイント
- 2割特例は延長されず、令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終了します。
- 代わりに新設される3割特例は、法人には適用されません。法人は令和8年10月1日以後、本則課税か簡易課税を選択する必要があります。
- 個人事業者も3割特例が使えるのは令和9年分及び令和10年分の2年間限り。令和11年分からは本則課税か簡易課税への切り替えが必要です。
- 2割特例・3割特例の適用者がその後に簡易課税へ移行する場合、届出書の提出期限が緩和される措置も設けられています。
まとめ:時系列で見るとこうなる
2つの経過措置は区切り方(起算日)が異なる点に注意が必要です。仕入税額控除は「10月〜9月」の事業年度ベース、2割特例・3割特例は個人事業者の場合「暦年(1月〜12月)」ベースで動きます。それぞれ分けて時系列を確認しましょう。
① 仕入税額控除(買い手側)
- 令和8年9月30日までの日の属する課税期間:80%控除
- 令和8年10月1日から令和10年9月30日までの日の属する課税期間:70%控除に縮小
- 令和10年10月1日から令和12年9月30日までの日の属する課税期間:50%控除に縮小
- 令和12年10月1日から令和13年9月30日までの日の属する課税期間:30%控除に縮小(ラストスパート期間)
- 令和13年10月1日以後の日の属する課税期間:経過措置終了、インボイス保存が前提の本則ルールへ完全移行
② 2割特例・3割特例(売り手側・小規模事業者向け)
- 令和8年9月30日までの日の属する課税期間:2割特例が使える「これまでどおり」の期間(個人事業者・法人とも)
- 令和9年分及び令和10年分:個人事業者のみ3割特例へ切り替え。法人はこの時点で特例が終了し、本則課税か簡易課税を選択
- 令和11年分以後:個人事業者も特例終了、本則課税か簡易課税へ移行
数字が多く覚えにくい制度ですが、「買い手側の話か、売り手側の話か」「自分は個人事業者か法人か」の2軸で整理すると理解しやすくなります。自社・自身がどの区分に当てはまるか、次の決算までに一度確認しておくと安心です。
本記事は令和8年度税制改正の内容をもとに作成していますが、詳細な適用要件や手続きについては、国税庁の公表資料または顧問税理士に必ずご確認ください。

